○井上(一)委員
希望の党の井上一徳です。
携帯電話の契約数は1億7千万台ということで、もう1人1台以上になっているわけですが、モバイル市場は、実質的に大手3社の寡占的状態ということで、競争環境が十分ではないということで今回の法案も出されたと認識しておりますが、この大手3社の寡占的状態がどうしてこのように続いてきたのかという原因をどのように分析しているのか、まず公正取引委員会にお聞きしたいと思います。
○菅久政府参考人
お答え申し上げます。
公正取引委員会は、携帯電話市場におけます取引慣行等につきまして競争政策上の課題の検討を行いまして、昨年6月、「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という実態調査、報告書を公表しております。
委員御指摘のとおり、この報告書に書いておりますとおり、MNOが実質的に3グループに収れんして、市場が寡占化しているという指摘がございます。
また、この報告書の中では、競争が十分に進んでいないという状況として、例えば通信と端末のセット販売、それらにつきましても、これが依然として中心となっていて、端末の大幅な値引きが行われる一方、通信料金単独では大幅に値下がりしていない、こういうところも含めまして全体として競争が十分に進んでいるとは言えないということで、寡占化している状況が続いているというふうに考えております。
○井上(一)委員
こういう、公正取引委員会、平成28年度にも調査をされ、更にこれをフォローアップをするということで平成30年度も調査されたということで、継続的にやっておられると思います。
こういうような公正取引委員会の調査も踏まえた上で今回の法案が出たものだと思っているのですが、改めて総務大臣に、今回の法案を出した趣旨、背景について、説明いただきたいと思います。
○石田国務大臣
総務省では、これまでも、より低廉で利用しやすい携帯電話料金を実現するため、さまざまな公正競争促進の取組を進めてきたところでございまして、昨年の8月10日には、大臣会見で、電気通信事業分野における新たな競争ルール等の包括的検証を審議会に諮問する旨を発表いたしました。
その後、昨年8月21日に、菅官房長官から、我が国の携帯電話料金がOECD加盟国平均の二倍程度であり、他の主要国と比べても高い水準にあることや、携帯電話事業への参入を表明した楽天が大手携帯電話事業者の半額程度の料金を予定していることを踏まえたものと承知をいたしております。
本法案は、総務省の有識者会議での提言を踏まえ、通信料金と端末代金の完全分離あるいは行き過ぎた囲い込みの是正等によって、公正競争を一層促進しようとするものでございまして、これにより、料金低廉化が促されることになると考えております。
また、今御指摘の、公正取引委員会が昨年6月に取りまとめた調査結果につきましては、独占禁止法の観点から携帯電話市場の競争政策の課題について整理、検討するものと承知いたしております。
その後、昨年10月から開催をされました総務省の有識者会議に、公正取引委員会にはオブザーバーとして参加いただくなど連携しつつ、それぞれ所管する法律の観点から、携帯電話市場の公正な競争環境の確保と利用者利便の一層の向上に取り組んでいるところでございます。
○井上(一)委員
公正取引委員会の30年度調査の中で、ポイントは、MVNOです。これの新規参入の促進をしていくという観点から、幾つか指摘されている中で、中古端末の流通を図っていく必要があるということで、この調査では、平成28年度のスマートフォンの出荷台数は3,013万台であったのに対して、中古スマートフォンの販売数は158万台、シェアはわずか 5%であったということで、この数字が平成28年度調査以降も変わっていません。MNO三社が中古端末のSIMロック解除に対応していないということが一つの原因として挙がっていると思います。
そこで、中古端末のSIMロックの解除の現状と今後の方向性ということを教えていただきたいと思います。それによって中古端末の流通がどのような見通しになっていくのか、教えていただきたいと思います。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘のように、中古端末市場というものをこれから更に伸ばしていくためには、SIMロックの解除ということは極めて重要だと考えております。
既に、NTTドコモにおきましては、過日、中古端末についてもSIMロックの解除というものを実施をいたしております。また、他の携帯事業者につきましても、本年9月までにSIMロックの解除、これは中古端末でございますけれども、を実施するということになっております。
したがいまして、この9月の段階で、中古端末につきましてSIMロック解除ということが全体として出そろう形になるというふうに認識をしております。
○井上(一)委員
念のため確認なのですが、ことしの9月から中古の端末についてはSIMロックが解除されている状態になるということでよろしいでしょうか。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりでございます。
○井上(一)委員
続きましては、接続料について、もう少しMNOが接続料を引き下げるというインセンティブを持つような制度設計が必要だということも言われています。
これについては、例えば、接続料等の周波数割当ての活用ということで、いろいろ周波数割当ての審査において、MVNOに対する利用を促進する計画を有しているかどうかについても審査するというようなことになっておりますが、更に審査基準を、もっとMVNOが利用しやすいような審査をしていくということは十分検討に値すると思いますが、この点についてはいかがお考えですか。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。
今般の5Gの周波数割当てに先立ちまして、周波数割当ての方針でございます開設指針というものを策定、公表したところでございます。これに基づいて5Gの周波数割当てを行ったわけでございますけれども、この中で、審査基準の一つといたしまして、5Gの周波数の割当てを受けようとする者の中で、MVNOをいかに受け入れる計画を持ち合わせているかということが一つの評価項目でございました。
ただ、これも、計画だけというわけにはいきませんので、開設指針の中で、次回の追加割当てを行う場合には、今回表明したMVNOの受入れ計画について、実際にどれくらい計画が進捗したのかという実績を評価するということにしてございます。
また、総務省におきましては、電波利用の状況につきまして定期的に動向調査を行っております。この結果は公表しておりますけれども、この中でも、MNOがMVNOをどの程度受け入れているのか、こうしたことについても実際に評価を行い、これを公表をしてまいりたいというふうに考えてございます。
○井上(一)委員
よくわかりました。MVNOの参入を促進する政策をぜひ進めていっていただきたいと思います。
それでは、次に、危機管理の観点から、首都直下地震とか南海トラフ地震という大災害が起こった場合には、通信障害が生じる可能性が当然あるわけです。こういった通信障害を防ぐためにも、基地局のバックアップ体制を充実させておくことが必要だと思いますが、このバックアップ体制についてどのような取組を行っているか、聞かせていただきたいと思います。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。
平成23年の東日本大震災を受けまして、総務省では、通信設備の停電対策や、重要な伝送路の冗長化、2ルート化、3ルート化等でございますけれども、こうしたことに関係する省令、技術基準等でございますけれども、これを平成24年、翌年に改正をいたしまして、これに基づきまして通信事業者が対策を講じてきたところでございます。
また、携帯電話につきましては、現在もはや欠くことのできないライフラインになっておりますけれども、昨年のたび重なる災害等を受けた緊急点検を行いました結果、被災直後の役場付近において通信サービスの被害を正確に把握できていなかったことや、応急復旧手段の不足により大規模災害時に主要基地局の機能維持が難しいおそれがあることが判明をいたしました。
これを受けまして総務省では、的確かつ迅速な初動対応のため、平素からの通信事業者との連携体制を構築するとともに、応急復旧手段としては、機動性にすぐれた移動型設備の活用が有効であることから、車載型の携帯電話基地局数の増設の取組を通信事業者に働きかけているところでございます。
今後とも、さまざまな規模、態様の災害時に国民の皆様が安心して通信を利用できるよう、引き続き、事業者や関係省庁と連携をしながら取組を進めてまいりたいと考えております。
○井上(一)委員
先日議論された電波法の改正案の中で、大規模な災害が発生した場合の対策として、耐災害性強化支援事業を電波利用料の使途に、地上基幹放送は含めるということで、言うなれば、地上基幹放送に限定して耐災害性強化支援事業が行われるということだと理解しております。
携帯電話の基地局も非常に災害時に重要な役割を果たすわけですので、この電波利用料の使途に、携帯電話の基地局も対象とすべきだったのではないかと思いますが、この点についてはいかがですか。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、通信事業者におきましては、車載型基地局等の配備を現在進めていると承知しております。
現時点では、携帯電話基地局への予算支援がなくても、災害時に的確かつ迅速な応急復旧を行っていくことが可能であるというふうに私どもとしても見込んでおります。
また、携帯電話事業者各社から総務省に対しても、現時点では具体的な要望をいただいているところではございません。
したがいまして、携帯電話基地局の耐災害性の強化につきましては、少なくとも当面の間は、携帯電話事業者の自助努力できちんと進めていただくことを基本と考えているところでございます。
○井上(一)委員
わかりました。
これから5Gの世界に入ってくるということで、そうなってくると、いろいろ身の回りのものをインターネットでつなげる、いわゆるIoTの世界になってくると、サイバー攻撃に対するリスクも大きくなるということであります。
それで、本年の2月20日に総務省は、国内の約2億個の機器のセキュリティー対策の調査を開始したということを聞いておりますが、今、このセキュリティー調査の現状がどうなっているのか、説明いただきたいと思います。
○竹内政府参考人
お答えいたします。
IoT機器を悪用したサイバー攻撃の深刻化を踏まえまして、本年2月20日より、国立研究開発法人情報通信研究機構がサイバー攻撃に悪用されるおそれのある機器を調査し、インターネットプロバイダーを通じて利用者に注意喚起を行う取組としてNOTICEを実施しているところでございます。
現時点では、情報通信研究機構との覚書の締結等が終了しているインターネットプロバイダ14社の約4千万のIPアドレスを対象に調査を実施しているところでございます。
具体的には、パスワード設定が脆弱で容易にログインできるIoT機器を特定いたしまして、当該機器の機種の特定や具体的な対策手法の確認等を行いまして、順次、ユーザーに対してパスワード変更等を行うようにインターネットプロバイダーを介して注意喚起を求めることとしております。
今後、この取組に参加するインターネットプロバイダーをふやすなど取組の推進に努めてまいりたいと考えております。
○井上(一)委員
ぜひしっかり調査を進めていただきたいと思います。
自動運転となどの世界がこれから広がるとなると、自動運転の車をハッキングしてテロに利用するという可能性もあるということも言われていますが、今後、5Gの世界におけるセキュリティー対策、これは政府全体としてどういうような取組をされているか、お聞かせいただきたいと思います。
○山内政府参考人
お答え申し上げます。
サイバーセキュリティー対策につきましては、サイバーセキュリティ基本法に基づきまして、基本計画であるサイバーセキュリティ戦略を定めて、さまざまな対策を進めることとしております。
現行の戦略につきましては、昨年の7月に閣議決定をされました。この中では、サイバー空間につながるさまざまなもの、先ほど委員が御指摘になったような自動運転に頼る自動車、それから、先ほどのお話にもございましたIoT、インターネット・オブ・シングス、物がつながります、サイバー空間につながるさまざまなものというものが急速に広がる、これが経済社会の発展に不可欠なインフラとなってまいりますので、サイバーセキュリティー対策は喫緊の課題であるということを申し上げているところでございます。
これを踏まえまして、今後、この戦略に基づいて、官民が連携をして、安全なIoTシステム、インターネットが、さまざまなものにつながります、このようなシステムの構築に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
○井上(一)委員
サイバーセキュリティーは、各省庁ごとに取組も行われておりますし、民間でもやっております。やはり日本全体として総合的に取り組む必要があると思いますので、ぜひ内閣官房の方でリードして、よろしくお願いしたいと思います。
では、以上で終わります。