国会活動

NHKの受信料、かんぽ生命報道

〇第201回国会 衆議院 総務委員会 2020年3月19日(木)

○井上(一)委員

 きょうは、令和2年度のNHKの予算ということで、受信料のあり方を中心に議論をさせていただきたいと思います。

 もう御承知のとおりですが、NHKの事業というのは、視聴者の皆さんの貴重な受信料によって成り立っています。ただ、この受信料のあり方をめぐってはさまざまな議論がありまして、BSとかCSのようにスクランブルをかけて、見たい人だけが見て、見たくない人はもう受信料を払わなくてもいいのではないかという議論があります。

 私自身はスクランブルをかけることについて賛同しているわけではないのですが、国民の多くの方々がこのような意見を持っておられるという事実についてはやはり真摯に受けとめて、真正面から受信料のあり方について議論をしていくという姿勢が大事ではないかと思っています。

 私は、NHKの改革をもっと徹底的に進めることによって受信料を大幅に下げることができ、それによって、視聴者の方々が公平感それから納得感を持って受信料を支払えるという環境づくりができるのではないかと思っておりますので、そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、NHKの大まかな構造をいいますと、事業収入が約7,200億円になっています。これは視聴者の方々の貴重な受信料が中心です。それで、受信料については、地上波が年間で約14,000円、地上波にプラスして衛星の設備を持っている人が年間で24,000円か25,000円といった程度になっています。全員から受信料をもらっているわけではなくて、支払って頂いている約8割の方々からしか受信料を徴収できていません。そして、徴収するための経費としても約780億円の費用がかかっているということです。そこで、まず、NHKの事業規模全体をどうしていくのか、それから、8割の方々からしか徴収できておらず支払い率をどう上げていくのか、それから、それを集めるための営業経費780億円をどれぐらい圧縮できるのかといったところが論点になってくると思っています。

 それで、NHKの受信料についてはさまざまな議論があるわけですが、受信料の仕組みについて視聴者の皆さんにわかりやすく御説明していただきたいと思います。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信料制度は、放送法第64条を根拠として、NHKが公共放送としての業務を行うために必要な経費を受信機の設置者に公平に負担していただくという考え方に基づくものであり、これにより、高度な自主性を財源面から保障する制度というふうに承知をしています。2017年12月の最高裁判決においても公共放送の意義が認められ、受信料制度は合憲であるという判断が示されています。

 この受信料制度により、公共の福祉のため、あまねく日本全国において受信できるように、豊かでよい放送番組による国内放送を行うことなど、公共放送の役割を果たし、健全な民主主義の発達や文化水準の向上に貢献できるものというふうに考えております。

○井上(一)委員

 私の理解では、先ほど御説明がありましたが、NHKは国民の知る権利を充足し、健全な民主主義に寄与することを究極の目的とするということで、NHKを見ることができる受信設備を持っている人たちみんなで応分の負担をするという、まさに特殊な負担金としての性格があると承知しております。

 この最高裁判決が出た後には、これまで受信料を支払ってこなかった人も、受信料を支払う人がふえてきたと聞いておりますが、今の受信料の支払い率はどのぐらいになっているんでしょうか。

○松原参考人

 お答えいたします。

 2018年度末の支払い率は82%となって、2017年度に比べて2ポイント向上をしています。

 なお、2020年度の予算、事業計画においては、84%を目指して公平負担の徹底に取り組むこととしています。

○井上(一)委員

 最高裁判決が出た後も、ふえたとはいえ、まだ82%ということになっております。

 受信設備を設置しながら、今なお契約をせずに、支払いに応じてもらえていない世帯や事業者はどのぐらいあるでしょうか。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信契約を締結していただけない件数は、2018年度末で819万件、内訳は、世帯が792万件、事業所が27万件というふうに推計をしています。

○井上(一)委員

 さらに、契約をしていただいているにもかかわらず、支払いに応じてもらえていない世帯や事業者はどのぐらいあるでしょうか。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信契約を締結した上でお支払いをいただけていない、未収数というふうに呼んでいますけれども、2018年度末では76万件、世帯が74万件、事業所が2万件というふうになっています。

○井上(一)委員

 合計しますと、895万件の世帯や事業者の人が受信料を払っていないということになるわけですが、もし仮に、この895万件の方々から受信料を徴収することができるとすると、どのぐらい増収する計算になるでしょうか。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信契約には、先ほどお話がありましたけれども、衛星契約、地上契約といった契約種別があって、それ以外に、割引とか免除の制度等、複数あるため、仮に支払い率が100%になった場合の受信料収入を計算するというのは、なかなか困難だというふうに思います。

○井上(一)委員

 きのうもレクのときに、なかなか計算するのは難しいということでしたので、私が本当に単純計算をしてみました。

 地上波だけでいいますと、これは895万件に先ほどの14,000円を単純に掛けると、1,250億円になるわけです。それから、衛星についても、契約している人が今の比率だと大体半分ぐらいおられるということなので、それも入れてみると、1,750億円になり、相当な増収になるというのは、単純計算してもわかるわけです。

 それで、この100%をぜひ目指していただきたいとは思うのですが、いろいろ苦労はされていると思います。それで82.1%になっているということですが。

 資料2は、都道府県別の世帯支払い率ということで、全国平均でいくと、2018年度末で81.2%ということですが、全国では相当なばらつきがあります。秋田で98.3%ということですが、沖縄では51%、東京とか大阪の都市圏だと低い支払い率になっているということであります。

 なぜこのようなばらつきがあるのかについて、御説明いただきたいと思います。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信料の支払い率については、大都市圏で低い傾向にあって、地方圏が高い傾向にあるという結果が出ます。

 その要因としては、大都市圏では世帯の移動が多いということと、単身世帯やオートロックマンションなどの集合住宅の割合が高いということがあって、面接がなかなか難しいということがあって、NHKの契約収納活動の環境が厳しいということが影響しているというふうに考えています。

 こうした大都市圏においてやはり支払い率を向上させていくことは、公平負担を徹底していく上で重要な課題だというふうに考えて、不動産会社とか公益企業との連携など訪問によらない対策の推進や、法人委託の安定的な運用等によって契約収納活動の一層の充実、受信料制度に対する理解を深めていくための広報活動など、積極的に、今、取り組んでいるところであります。

○井上(一)委員

 やはり都市圏での徴収というのはかなり難しいと思います。徴収をするために、訪問員が訪問していると思います。先ほど約780億円の受信料徴収料と申し上げましが、どのぐらいの人がこの徴収に携わっておられるのかについて、御説明いただきたいと思います。

○松原参考人

 お答えいたします。

 受信契約の取次ぎ、受信料の収納など、受信料収入を確保するために必要となる営業経費は、先ほど話がありましたけれども、2020年度予算では779億円を計上をしています。

 このうち、人件費は126億円で、受信料関係の業務に携わるNHKの職員は853人というふうになっています。

 また、契約収納業務に当たる個人委託の地域スタッフは840人、それから、エリアを特定したエリア型法人や公募型企画競争等による法人事業者は全国で512地区、あわせて、訪問要員に係る経費は320億円を計画しています。

 営業経費には、このほか、口座振替の収納に係る手数料とか情報処理の経費、あるいはシステムの減価償却費など、332億円も含まれています。

○井上(一)委員

 それらの職員の方、スタッフの方、相当努力はされていると思いますが、他方で、苦情も非常に多いという状況です。平成30年度でも37,000件の苦情があるということで、幾ら頑張って訪問員の方が訪問してもいないとか、それから訪問しても苦情が出ていて、それで780億円の経費がかかっているとすれば、相当な改革をしていかなければならないと思っています。

 諸外国では、強制徴収それから罰則等の規定もあり、徴収率はほぼ100%に近いということで先ほど大臣からもありました。徴収率を上げるために、昭和41年それから昭和55年には、政府提出の法案で、契約義務にプラスして受信料の支払い義務を法律上明記するということで、放送法改正案が国会に提出されておりますが、成立には至っておりません。それから、平成19年には、当時の菅総務大臣が、NHKに対して2割値下げするように求めるとともに、放送法の改正案に受信料支払い義務の規定を盛り込むという考え方を示されたこともあります。

 私も、NHKの受信料を大幅に下げるということが大前提ですが、受信料支払い義務の規定を盛り込むということも検討に値するのではないかと思っております。

 そして、今後、テレビを持たない世帯が増加することが見込まれます。将来的には、パソコンやスマートフォンなど、テレビ以外でNHKを視聴する方々がふえていくという状況の中で、ドイツでは、2013年1月に、公平負担の確保を目的に、受信機所有の有無にかかわらず、住居単位で一律の料金を徴収するという放送負担金制度が導入されております。

 こういう例もありますが、NHK、政府として、どのような受信料のあり方を今後検討していくかについて、御説明していただきたいと思います。

○前田参考人

 放送と通信の融合が進む中で、例えばテレビを持たない方に対して公共性の高い情報やコンテンツを届けていくことは、信頼される情報の社会的基盤という役割を果たしていく上で重要な課題だと考えております。

 こうした観点から、放送と通信の融合時代にふさわしい受信料制度のあり方につきましては研究が必要な課題だと考えておりまして、海外の公共放送の事例や有識者の専門的な知見を参考に、引き続き研究してまいりたいと思います。

 各国の公共放送は、それぞれの国の歴史、伝統、政治、経済に応じて発展してきておりまして、財源につきましても、その歴史的経緯に応じて各国が独自に決めているものと承知しております。

 いずれにいたしましても、受信料のあり方につきましては、視聴者・国民の皆様の御理解を得ることが大前提でございます。

○高市国務大臣

 受信料制度のあり方ですけれども、やはり、多くの方々の受信料によって業務を支えられているNHKということですから、公平感と納得感が何より重要だと思います。

 先ほど委員から御紹介ありましたけれども、契約しているのに受信料を払っていない人の数を問われて、76万件という数字が出てきました。これはやはり、放送法の中で、NHKは、契約した方について、総務大臣が定めるような場合を除いては受信料を免除してはならないとなっておりますので、これはしっかりと公平に徴収をしていただかなければなりません。

 それから、委員も同じ認識だと思いますけれども、これは、平成30年度の決算で見ましても、7,122億円の受信料を集めるのに773億円も使ってしまっているという、この受信料の徴収費用が非常に高いということも感じます。その分受信料を下げてほしいというお声があることも承知をしております。

 私としては、やはり、放送と通信の融合の時代でございますので、これからテレビを受信できないモニターが更に普及してきたらどうなっていくんだということですとか、受信設備は持っていないけれどもNHKの同時配信については、ここだけは見たいんだという方のニーズにどう応えていくか、そういう新しい課題も出てきておりますので、古くて新しい課題ですね、今の時代の技術に対応した受信料制度のあり方について、今、有識者会議でいよいよ御議論を開始していただくというところですから、しっかりと取り組んでまいります。

○井上(一)委員

 先ほど大臣からありましたように、公平感、納得感のある受信料のあり方をぜひ検討していただきたいと思います。それで、多くの視聴者の方々が公平感、納得感を持って受信料を支払っていただくというためには、やはりNHKに対する信頼感を高めるということも非常に大事だと思っています。その点、今回のかんぽ生命の番組をめぐるNHKとか経営委員会の一連の対応が問題視されているという今の現状が非常に残念でなりません。

 番組の苦情ということなので、本来であれば、放送法第6条第1項で設置が義務づけられています。放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関を置くものとするということで、NHKにおいては、放送法第82条第1項で、この放送番組審議機関として、中央放送番組審議会が設置されることになっています。

 今回、番組の苦情ということなので、本来であれば、この中央放送番組審議会でしっかり議論して、番組に問題があったのかなかったのかを審議すべきだと思っているのですが、審議会ではどのような扱いがされたのかについて、御説明ください。

○木田参考人

 お答えいたします。

 おととし、2018年7月に郵政3社の社長名でNHK会長宛てに届いた申入れは、「クローズアップ現代+」が情報提供のために公式ツイッターなどに掲載した動画の中止を求める内容でありまして、放送番組に寄せられたものではなく、取材の手法についての申入れだったというふうに認識しております。

 また、その後の郵政側とNHKとのやりとりは、取材の過程における取材の当事者とのやりとりであったことから、番組審議会に報告することはありませんでした。

 なお、この件につきましては、郵政側の不当な圧力によって番組内容がゆがめられたとする報道があった後の、昨年、2019年10月の中央放送番組審議会において取り上げました。報道された内容が事実に反するということなどをNHK側から説明するとともに、委員からは意見をいただき、議事録を公開しております。

○井上(一)委員

 公正中立に番組の内容を審議するという機関としてこの中央放送番組審議会が設置されているわけですから、番組の内容について苦情があった場合には、この番組審議会をぜひ活用していただきたいと思っています。

 放送法第32条第2項はもう本委員会でもかなり議論になっておりますが、「委員は、個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない。」として、経営委員が放送番組に干渉することを厳に禁じているわけであります。

 経営委員の発言は放送法に違反するのではないかというような指摘が本委員会でも数多くありました。そういう指摘があること自身が非常に私は残念だと思っているのですが、経営委員長として、今回の事案をどのように総括して、そして、今後経営委員長としてどのように対応されるのかについて、最後にお聞きして、終わりたいと思います。

○森下参考人

 お答えいたします。

 郵政3社からの申入れに関するやりとりにつきましては、あくまでも非公表を前提とした意見交換の場で行いましたが、経営委員会が会長に注意を申し入れたことの重要性や、経営委員会の透明性という観点から考えれば、会長へ注意したことは議事録で公表すべきだったと反省はしております。このため、昨年10月には議事経過を公表し、更に今回、議事経過を補足する資料を作成いたしました。

 議事録の扱いや議事の公表について、視聴者の皆様にわかりやすく説明することができず、結果的に今回の問題で世間をお騒がせしましたことについては、厳しく受けとめております。

 放送法第32条の規定のとおり、経営委員会が個別の放送番組の編集に関与できないことは十分認識しております。経緯を確認する中で、4月の番組や公式ツイッターの動画に関する意見や感想も出ましたが、そのことで経営委員が番組編集に介入したのではないかという疑念を持たれてしまったことについては反省をしております。

 経営委員会に課せられている役員の職務の執行の監督という責務を果たす上で、状況によっては番組について意見を述べ合うこともあり得ると考えますが、これからは、番組編集の自由に一層配慮し、個別の番組についての発言には疑念を持たれないよう、慎重を期してまいりたいと思っております。

○井上(一)委員

 NHKは国民全員の財産ですので、経営委員長としてしっかりと対応していただきたいと思います。

 では、以上で終わります。

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