○井上(一)委員
国民民主党・無所属クラブの井上一徳です。
本日は、依田参考人、そして、河上参考人、板倉参考人、増田参考人の皆様には、本当にお忙しい中、来ていただいて、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございました。
最初に、まず、依田先生が本当に有識者検討会、苦労して取りまとめられたということをお伺いして、改めて本当に敬意を表したいと思います。
その中で、記者会見の中で、デジタルプラットフォーマーの社会的責任が位置づけられたのは大きな一歩ということで、私も、まずは努力義務からスタートするということは理解できるのですが、ただ、一点、やはり被害に遭った消費者の方が出品業者を特定できるように、少なくとも、身元確認のための情報提供については義務化してもよかったのではないかと思っています。この点については、依田参考人、河上参考人、板倉参考人、増田参考人にそれぞれのお考えを聞かせていただきたいと思います。
○依田参考人
井上先生、どうもありがとうございます。
私としましても、これでよかったという思いが半分ある一方で、これでよかったのだろうかという思いも他方で残り、じくじたるところもございます。
そして、その検討会において、当然のことだと思います、彼らが悪いとは思いませんが、規制がかかるかもしれない状況において、プラットフォーマー事業者が、規制はかけてくれるな、共同規制の枠組みの中で自助努力、自発的な努力義務にとどめてほしいというような、近いことを述べるところもなかったとは言えません、あったと思います。
そういう中において、本当にそのところで、努力義務だけで済むのかどうかということについて、様々、委員で考えてきたところでもございます。
恐らく、そうしたものに非常に慎重な意見を吐いたであろう巨大IT事業者、プラットフォーマーは既に十分な努力を、自助努力を進めてきているところでありますので、彼らは、正直申し上げまして、義務がかかったところで、そのバーは楽々とクリアしてしまうであろう。
実際に、彼らがネガティブな消極的な態度を取ったとしても、彼らに実際、それが降りかかってくるとは私は思いません。むしろ、こういうところで取り逃してしまう、存在すら我々が知らないような人たちが本当の悪さを申し上げるところで、消極的な態度を取った事業者と、実際に、彼らが言い分の半分認めて、まずはやれるところでやってみようといったときに取り逃してしまう層が異なっているということが、先ほど板倉委員も何度かそのことを申し上げておりましたが、一番私が、先ほど述べた、じくじたる部分であったと思っているところでございます。
したがいまして、何度も申し上げたように、この法で十割完全なものにはなりません。ただ、逆に言うと、どこがそこの、我々の手の届かないところであって、どういうところを本当に我々は次のターゲットにしなくてはいけないかというのを慎重に追跡する必要がございまして、そういう意識を持って、この法律を成立させ、施行させ、なお、その次の手をずっと、随時、不断の観察を続けながら考えていかないといけないかなと思っております。
今の心境は以上です。ありがとうございます。
○河上参考人
井上先生のあの御指摘は、やはり依田さんが大分苦労されているのは、私も同じだなというふうに思いましたけれども。
私は3つぐらい問題のレベルが違う問題が含まれているような気がしていて、1つは、元々、こうした極悪層と、それからそうでない従順層とその中間層、本当にうまく切り分けるということができるのかという技術的な問題が1つあります。それから、もう1つは、CツーCがそこに入ってくるようなことがあったときに、その一部のプライバシーの問題というのが一方で残っているという2つ目の問題があります。それから、3つ目の問題は、もう少し根本的なところなんですけれども、その責任の根拠づけというのがどこに求められるだろうという話であります。
私、今日、どうしても申し上げたかったことが1つあって、システム責任論の話を途中までして終わりにしたんですが、御承知かと思いますが、大川小学校事件というのが津波の被害でありました。あのときに、県とか市の教育委員会、それから校長先生、職員、つまり、教育に携わっている人々のシステムの中に、十分なマニュアル作りだとか日頃の訓練とか、そういうものがなかった。だから、そのときの校長先生の過失の問題よりも、むしろ組織として全体にちゃんと対応ができていなかったということが大川小学校事件の根本の問題だった。これが最高裁まで行って認められたわけであります。
つまり、ある組織をつくって、そのシステムの中でちゃんと問題を処理していく、そういう仕組みをつくるというのが、実は、プラットフォーマーを中心とした取引のネットというかシステムを構築して、それをある程度支配し、影響力を行使しているような人たちは自らの責任を分担すべき義務があるんだというところから出発しないと、なかなかそこの部分が、ほかの技術的な問題のために足かせになって問題が前に進まないというところがあるんじゃないかということを考えていたものでございます。
ちょっと長くなってしまいまして、失礼しました。
○板倉参考人
御質問ありがとうございます。
検討会の委員としては報告書は了としましたので、努力義務でもやむを得ないと。それは、来られていた大手プラットフォーマーはとにかくやるとおっしゃっているというのがありましたが、他方で、並行して日弁連で検討していたODRの意見書では、紛争解決という観点からは、やはり確認してほしい、身元確認についてちゃんとできていない人とは契約を結ばないということについては、勧告、命令、罰則というものを入れてはどうかという意見を組織としては出しているところであります。
それから、現行の権限として、とにかく、日本に対して、日本の消費者に対して継続して取引をするんだったら、登記義務があるわけです。登記してくれると、ほとんどのことは解決するんですね。民事訴訟も起こせる、行政処分も出せるということで、これは頑張ってやってほしいと思います。
法務局の管轄なので、登記のお世話をしている方々ですから、そんな簡単に中国の販売業者等とか巨大な米国のプラットフォームと戦えないというのは、多分そうだろうと思いますが、我々弁護士と同じように司法試験に受かって留学もしている検事が、法務省にはたくさん優秀な方がおられますから、是非出向していただいて、頑張って戦っていただきたいなと思っています。
それから、特商法の越境執行協力、外国の当局とのやり取りの条項が今度の特商法の改正では入る予定になっておりますので、それは是非使いこなしていただいて、米国のFTCや中国の消費者当局と、中国の消費者当局とどれぐらい協力できるのか分かりませんが、しかしながら、中国だって迷惑な業者は迷惑なはずですから、きちんと情報交換して、それはつかんでいただくというのもやってほしいなと、そういう3段階で考えています。
ありがとうございます。
○増田参考人
特商法で定められている事業者の所在確認、所在を常に明らかにしておいて連絡がつくようにということは最低限やるべきことですので、その所在が分からないということは、それ自体はあってはならないというふうに思います。
プラス、代表者の個人の住所などについては、やはり請求の根拠などを確認した上で、教えるかどうかというのはもう既にここに書かれていますので、そういうことであれば、それは義務になったとしても、余り問題にならないのではないかというふうに思っております。
○井上(一)委員
時間もないので、まとめて2つ依田参考人にお伺いしたいのですが、これからまさに、この法律が制定した後の取組が非常に重要になってくるとするということで、まず1つは、検討会の報告書において言われているのは、消費者庁においては必要な人材の確保その他組織体制の充実を図るべきであるということで、組織をしっかりすべきだということだと思います。
もう1つ、私は、この官民協議会の役割が非常に重要になってくると思うのですが、消費者庁の組織論と官民協議会にかける期待の2つについてお聞かせしたいと思います。
○依田参考人
ありがとうございます。
組織論にも関わる大変難しい問題でございますし、組織内部の問題に関して、私自身が、消費者庁が現在徳島県に設置した国際研究センターの非常勤ではありますがセンター長の立場ではありますが、内部のガバナンス、マネジメントにそれほど暁通しているわけではございませんので正確なことは述べられませんが、ただ、1つ言えることに関しては、専門人材の不足、それだけは確かだと思っております。
そして、それについては、消費者庁が発足して10年以上たちますが、リアル、オフラインからデジタル、オンラインの世界に移行はますます進んでいきまして、この消費者問題はますます増えていくであろうことは疑いを持ちません。
そういう中において、特にこの人工知能、デジタルというような社会において、より専門性、技術性を持った人材がこの急増していく消費者庁の管轄の中のトラブルにおいてより必要とされることも確かでございますので、そういう意味においては、制度の整備の体制に対する御支援というのは政府にお願いしたいところでございます。
もう1つの質問を、大変恐縮ながら、教えてください。(井上(一)委員「官民協議会」と呼ぶ)官民協議会、分かりました。
これもまだ解けない問題でございまして、先ほど述べたデジタルプラットフォーマー取引透明化法、内閣官房並びに経済産業省、そしてこの消費者庁におけるデジタルプラットフォーム消費者保護法、簡略化しておりますが、両方とも、共同規制という形で、政府が一方的に事業者を縛るものではないやり方を取っております。これは2つ理由がございます。
1つは、まずは出発点として、事業者、プラットフォーマーの自助努力、彼らのイノベーションの力を信じ、彼らがやると言っている以上はきちんとやってもらって、それを毎年、監督、モニタリングをするという仕組みになっております。まずはそこのところで、彼らの力と意欲を信じてみるところからいって、毎年毎年コミュニケーションを持っていく。
なぜかといいますと、一方的にお上がしもべを縛るやり方でうまくいっていないという一方の事実もありますので、この共同規制に、今、ヨーロッパそして並びに日本が乗り出しているところでございます。
そして、この官民協議会を取ったもう1つの理由は、一方的な規制を強めて、お上が、例えばプラットフォーマーや出店、出品者を規制していくことが望ましくないという理由が1つございます。
それは何かというと、消費者の認知度あるいはリテラシーの問題でございまして、我々がよかれと思った、先ほど述べたパターナリズム、どんどんとプラットフォーマーに対して北風政策を取ること自体が、ある意味において、消費者の認知限界、あるいは限定合理性をより強め、より消費者、市民、国民自身が無責任な選択をどんどんと増長させて、大変言葉は悪いのですが、よりばかになっていってしまう可能性もあるからです。
そういった意味において、この共同規制と、国民の、自らが責任あるような形で選択をできるような支援と教育をどう進めていくのかも今後の官民協議会の中の1つの責務になると考え、今はまだ可能性を信じ、そこのオープンドアで考えております。しかし、うまくいくかどうか分かりませんので、毎年毎年、不断にそこはモニタリング、チェックをしていく必要がありまして、まさに、国会の諸先生方においても、ここは注視していただきたいというところでございます。
以上です。
○井上(一)委員
どうもありがとうございました。