国会活動

アマゾンや楽天への規制、消費者保護

〇第204回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会 2021年4月13日(火)

○井上(一)委員

 国民民主党・無所属クラブの井上一徳です。

 本日は、取引デジタルプラットフォームに関する法案について質問をさせていただきたいと思います。

 週の金曜日に、依田参考人、河上参考人、板倉参考人、増田参考人から大変貴重な意見を伺いまして、基本的にはそれを基に議論をしたいと思います。

 特に、依田参考人は、政府の検討会の報告書を取りまとめられたということで、大変苦労されたとお伺いしております。改めて敬意を表したいと思います。

 それでは、新聞でもいろいろ報道されていますが、国民生活センターによると、2020年度のネット通販に関する相談は26万件を超えて、前年度を3万件以上上回ったということ、それから、今年は新型コロナウイルス禍の外出自粛で更に増える可能性があるという指摘もされています。いろいろなトラブルはあると思いますが、このデジタルプラットフォーム上の取引におけるトラブルについて、大臣としては、現状についてどのように認識されていますでしょうか。

○井上国務大臣

 取引デジタルプラットフォームは、情報通信技術の進展に加えて、新しい生活様式の下で、消費者の日常生活に不可欠な取引基盤としての地位を確立しつつあります。

 しかしながら、取引デジタルプラットフォームでは、誰もが売主として容易に参入できるという特性も相まって、危険商品が流通したり、販売業者が特定できず紛争解決が困難となるといった消費者トラブルも発生しております。

 例えば、消費生活相談におけるインターネット通販が占める割合は、2019年には約20万件と、全体の2割を超えています。そのうち、オンラインショッピングモールにおける相談事例には、商品が届かない、模造品であったなどの売主の債務不履行に関する相談や、発火、発煙した充電器や電化製品などの事故のおそれがある出品に関する相談、売主と連絡が取れないなどの事例が見られます。

 本法案は、こうした状況に鑑み、取引の場の提供者である取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、消費者保護のために必要な措置等を実施することを求めるほか、危険商品の排除等に関し、内閣総理大臣が要請する仕組み等を設けることとするものであります。

○井上(一)委員

 ありがとうございました。

 デジタルプラットフォーマー、楽天とかアマゾンとか、よくそういった大手の名前は聞くのですが、では、実際に、法案の対象としている、取引デジタルプラットフォーム提供者というのは現在どの程度存在しているのか、把握している範囲でお答えしていただきたいと思います。

○坂田政府参考人

 お答えいたします。

 本法律案の対象となる取引デジタルプラットフォームには、オンラインモールやオークションサイトのほか、BツーC取引が行われる場合のフリマサイト、シェアリングエコノミーのプラットフォーム等といった様々な業態がございます。また、食料品、衣服、電気製品など物販を総合的に取り扱う場であるもののほか、アプリの販売、家事代行などのサービスの提供のような、特定の商品やサービスの取引に特化したものなどがございます。

 なお、デジタルプラットフォームの裾野は広く、今や様々な商品、役務、権利の取引に利用されているものが存在すること、また、本法律案の取引デジタルプラットフォームとは、サービスの一形態でございます。必ずしも取引デジタルプラットフォームの提供を専業としていなくとも、様々な事業者がこれを提供し得るものであること等から、事業者数については一概にお答えすることは残念ながら困難でございます。

○井上(一)委員

 できれば、イメージしやすいように、大体何百社とか何千社、そういった答弁もしていただけないかとお伝えしたのですが、それもなかなか難しいというぐらい裾野が広がっているということだと思います。

 今回の法案では、売主が事業者である場合を対象としておりますが、売主が消費者である場合には対象となっていません。メルカリなど、フリマアプリを介した取引においても消費者トラブルが発生していることを考えると、CツーCについても対象とする方向性も考えられたと思いますが、この点に関してはどういう検討がなされたのでしょうか。

○坂田政府参考人

 本法案は、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、自らが提供する場で行われる通信販売取引において売主が適切に消費者保護のための責任を果たすよう、販売業者等と消費者との取引関係を支える者として一定の役割を果たすことを求めるものでございます。

 売主が非事業者である個人の場合、すなわちCツーC取引の場となる場合には、売主は消費者を保護する責任を課せられていないことから、本法案の対象に含めることはしておりません。

 なお、CツーC取引の場と称されるものでも、売主が実態としては事業者、いわゆる隠れBである場合には、本法案の対象となります。

 売主が非事業者の個人である場合の買主の保護の責任の在り方については、場の提供者が果たすべき役割と併せて、別途更なる検討が必要であると考えております。

○井上(一)委員

 法案では、事業者に対して、必要に応じて、身元確認のための情報提供を求めることを取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務としております。ここは私も、努力義務ではなくて是非義務化してほしいという思いで、この間、4人の参考人にお聞きしました。

 依田参考人は、有識者会議の検討会の座長で、本当に取りまとめに苦労されたと思いますが、依田参考人からは、これでよかったという思いが半分ある一方で、これでよかったのだろうかという思いも他方で残り、じくじたるところもございますと、非常に取りまとめに当たって苦労された思いが吐露された発言だったと思います。

 そして、板倉参考人は、これは日弁連で検討した内容ということで、紛争解決という観点からは、やはり、身元確認についてちゃんとできていない人とは契約を結ばないということについて、勧告、命令、罰則というものを入れてはどうかという意見を組織としては出しているということでした。

 それから、増田参考人、消費者生活相談員協会理事長ですが、このように言っておられます。特商法で定められている事業者の所在確認、所在を常に明らかにしておいて連絡がつくようにということは最低限やるべきことですので、その所在が分からないということは、それ自体はあってはならないと思います。加えて、代表者の個人の住所などについては、請求の根拠などを確認した上で、教えるかどうかというものはもう既にここに書かれていますので、そういうことであれば、それは義務になったとしても、余り問題にならないのではないかと思っております。

 ということで、この間の参考人の御意見も踏まえますと、やはり私は、もう一歩踏み込んで、この情報提供については義務化するといったことについて措置した方がよかったのではないかと思うのですが、いかがお考えですか。

○坂田政府参考人

 お答えいたします。

 本法律案の対象となる取引デジタルプラットフォーム提供者には、規模や態様において様々なものが含まれ、個別の取引への関与の程度も様々でございます。

 一方、今般の法律案は、消費者保護を目的としていることから、多様な取引デジタルプラットフォームを幅広く法の適用対象とする必要があるため、義務ではなく努力義務を課すこととしたところでございます。

 ただ、努力義務であっても、取引デジタルプラットフォーム提供者にはそれに沿って措置を講ずることが求められ、その実施状況等について消費者に開示することとなっております。

 これにより、措置や開示を適切に行っていないデジタルプラットフォーム提供者は、消費者から信頼を失うことになりかねないことから、努力義務に沿った取組を促進できると考えております。

 なお、今回の法案提出を前に、大手デジタルプラットフォーム事業者を中心に、情報開示などにおいて自主的な取組が進められるなど、既に先取りした動きが見られ、こうした動きも注視してまいりたいと考えております。

○井上(一)委員

 事業者が信頼を失うというのは、当然なのですが、一番大事なのは、消費者が被害に遭わないということです。そこを原点にすると、情報提供の義務は検討してもよかったのではないかなと思います。

 まずは努力義務からスタートするということだったと思うのですが、この点については、是非、次の見直しのときには義務化について真剣に検討していただきたいと思います。

 法案では、販売業者に対して、必要に応じ身元確認のための情報提供を求めるとなっています。努力義務にするとしても、この必要に応じという言葉は削除してもいいのではないかと思うのですが、どうですか。

○坂田政府参考人

 法律案第3条第1項第3号において、取引デジタルプラットフォームの提供者は、場の提供者という立場からの補完的な役割として、自らが提供する場に身元を隠したり偽ったりする販売業者等が参入することを防ぐため、必要な措置を講ずることが求められます。

 もっとも、取引デジタルプラットフォームには膨大な数の売主が存在する中で、消費者被害を発生させている売主は割合としてはごく一部にすぎず、それにもかかわらず、膨大な数の売主の全てについて身元確認の義務を課すと、消費者被害の防止のためとはいえ、著しく過剰であり、これに応じることができる取引デジタルプラットフォーム提供者はごく限られるものとなると考えられます。

 販売業者等が行う身元に関する情報の表示について、消費者や行政からの情報提供や自らによる監視活動などを通じて表示内容に疑義があることを把握した場合などにおいて、身元の確認を行うことが合理的であり、このような場合を念頭に、必要に応じ、確認のための措置を実施すべきことを努力義務としたところでございます。

○井上(一)委員

 この身元特定という観点で、板倉参考人、弁護士の先生ですが、この間の委員会ではこういう提言もしていただきました。

 現行の権限として、日本に対して、日本の消費者に対して継続して取引をするんだったら、登記義務があるわけです。登記をしてくれると、ほとんどのことは解決するんです。民事訴訟も起こせる、行政処分を出せるということで、これは頑張ってやってほしいと思いますということで、外国の企業に対して、とにかく登記をしてもらえれば、それによって身元が特定できるので、この登記を頑張ってほしいという提言でした。実際、登記については現状どうなっているか、御説明していただきたいと思います。

○竹内政府参考人

 お答えいたします。

 委員御指摘の外国企業、会社法では外国会社というふうに申します。会社法上、「外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。」ということとされております。また、外国会社が日本における代表者を定めた場合には、3週間以内に、外国会社の登記をしなければならないというふうにされております。「外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができない。」とされておりまして、これに違反して取引をした者に対しては過料という制裁がございます。

 会社法が定めるこの登記義務を遵守しないで事業を行っている外国会社が存在するのではないかという御指摘があることについては、法務省としても承知をしておるところでございます。

 ただ、登記をしないままで我が国で事業を行う外国会社の実態というのを把握することについてはなかなか困難を伴うものでございまして、今後、関係省庁と連携して、外国会社の登記義務の内容を周知するなど、その履行を促すための取組について検討してまいりたいと考えております。

○井上(一)委員

 なかなか実態を把握するのは難しいとは思うのですが、周知をして、外国の会社に対しては、登記をしなければならないという情報をぜひ伝えていただきたいと思います。

 それから、板倉参考人は、もう1つの提言として、特商法の越境執行協力、外国の当局とのやり取りの条項が今度の特商法の改正では入る予定になっておりますので、これを使いこなしてほしいという提言もいただいています。この点についてはいかがですか。

○片桐政府参考人

 お答えいたします。

 越境的な電子商取引の取引規模は拡大をしておりまして、外国の販売業者等と日本の消費者のトラブルについても増加している中で、外国執行当局との情報交換がますます重要になってきてございます。

 このような状況を踏まえ、現在国会に提出している、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案において、特定商取引法等について外国執行当局への情報提供に関する規定を新設することといたしております。

 これによりまして、消費者庁から外国執行当局へ情報を提供するとともに、外国執行当局との間で相互主義を確保して、外国執行当局からも情報の提供を受けられるようにするものでございます。

 今後は、このような改正法の仕組みも活用いたしまして、外国執行当局との連携を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

○井上(一)委員

 販売業者に係るガイドラインについて質問させていただきます。

 消費者庁と経済産業省で策定して、100点以上の商品の新規出品、それから1月の落札額の合計が100万円以上、落札合計1,000万以上であれば販売業者に該当するなどが考えられます。これからガイドラインを策定して、明確に判断できる基準をつくられると承知していますが、どんな判断基準を考えておられますでしょうか。

○坂田政府参考人

 個人である売主が本法律案の販売業者等に該当するか否かの区別は、第一に、営利目的であるか否か、第二に、反復継続的に同種の行為を行っているかどうかについて、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されるものでございます。もっとも、当該区分が困難である場合も考えられることから、今後、消費者庁としての考え方を明らかにしてまいりたいと考えております。

 その際には、ほかの消費者保護法の適用を受けるかどうかの判断にも共通し得るものであることや、法の潜脱を招きかねないことを考えると、ある程度幅を持ったものとせざるを得ないと考えられますが、消費者を装う悪質な販売業者を捕捉できるようなものとすることを考えております。

○井上(一)委員

 検討会の報告書では、「消費者庁においては、必要な人材の確保その他の組織体制の充実を図るべきである。」と言われております。

 デジタルの分野は変化の激しい分野であり、技術に関する知識も必要となります。国がデジタルを進めている中にあって、消費者庁としても、人材の確保その他の組織体制の充実を図っていく必要があると思います。

 依田参考人はこうおっしゃいました。消費者庁において、専門人材の不足は確実に言えます。特に、これから、消費者庁が発足して10年以上たちますが、リアル、オフラインからデジタル、オンラインの世界に移行はますます進んでいきますので、この消費者問題はますます増えていくであろうということで、やはり、専門人材、これを活用することが重要だという御指摘をされております。組織の充実について、大臣、どのようにお考えですか。

○井上国務大臣

 消費者庁においては、従前より、多様な人材にその専門的な知見を生かして活躍いただいているところです。

 本法案が成立した暁には、法の運用がしっかりなされるとともに、適切に残された検討課題を検討できるよう、人事戦略という観点でも、より一層十分な対応をする必要があると理解しています。

 そこで、人事交流、研修の充実、職員の採用などの様々な手だてを活用して、組織として専門的な知見のある人材の確保に努めるほか、必要な体制の充実に取り組んでまいります。

○井上(一)委員

 特にデジタルに強い人材の確保をしっかり図っていっていただきたいと思います。

 では、最後の質問です。

 官民協議会の役割は極めて重要になってくると思っています。河上参考人がこうおっしゃっています。プラットフォーマーを中心とした取引のネットというかシステムを構築して、それをある程度支配し、影響力を行使しているような人たちには自らの責任を分担すべき義務があることから出発するということです。

 私は、官民協議会の中でも特に民の方々に、しっかり自覚を持って、責任感を持って、取引が円滑にいくように進めていってもらいたいと思っていますが、官民協議会、どのような役割を期待して、どのぐらいの頻度で開催していくか、その点についてお答えしていただきたいと思います。

○井上国務大臣

 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益を保護するためには、官民の主体が連携して取り組むことが必要です。

 そこで、本法案においては、内閣総理大臣、取引デジタルプラットフォーム提供者を構成員とする団体、消費者団体などにより構成される官民協議会を組織することとし、悪質な販売業者等に関する情報の交換や、消費者の利益の保護のための取組に関する協議などを行うこととしております。

 官民協議会は、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護のための取組を効果的かつ円滑に行うという目的を果たすために、機動的に開催するとともに、様々な課題の検討にも官民協議会という枠組みを最大限活用してまいります。

○井上(一)委員

 質問を終わります。ありがとうございました。

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