国会活動

契約書面の電子化、クーリングオフ、送りつけ商法

〇第204回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会 2021年5月13日(木)

○井上(一)委員

  国民民主党・無所属クラブの井上一徳です。

 まず、契約書面等の電子化について聞きたいと思います。

 これについては、もう皆さん御承知のとおり、非常に心配する声が多いわけですが、4月23日時点では123団体から慎重又は反対の意見が来ているわけですけれども、現時点ではどういう意見がどのくらい来ていますか。

○高田政府参考人

 お答えいたします。

 5月12日までに消費者庁で受け取った契約書面等の電子化に対する意見について、消費者庁に意見書を提出した団体数は180でございます。

 内訳は、弁護士関係36、消費者団体等73、司法書士会等9、全国知事会1、地方公共団体関係5、生活協同組合連合会4などが届いております。

 その内容は、いずれも紙の書面による消費者保護機能が損なわれるといった理由から、消費者利益の保護の観点から慎重に検討すべきとして、書面の電子化に反対若しくは慎重な検討を求めるものでございます。

○井上(一)委員

 この間の参考人の御意見を聞いていても、書面の電子化についてはかなり慎重な意見が多かったと思います。

 参考人の中には、オンラインによる英会話指導契約のような契約類型に絞って導入をすることが本筋ということで、まずは絞って、そこから検討した方がいいのではないか、むやみやたらに広げるのも危険であるというような御意見もありました。

 反対する、慎重な意見が多い中、政府としても問題意識は一緒だと思ういます。その点について、今後どのようにこれをしっかり担保していく、規制していく考えか、具体的にお話ししていただきたいと思います。

○高田政府参考人

 お答えいたします。

 消費者からの承諾の取り方につきまして、承諾を得ていないにもかかわらず承諾を得たなどとする悪質事業者を排除する観点から、例えば、政省令等において、少なくとも口頭や電話だけでの承諾は認めない、消費者が承諾をしたことを明示的に確認することとし、消費者から明示的に返答、返信がなければ承諾があったとはみなさない、承諾を取る際に、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メール等で送付されるのかを明示的に示すことなどを規定することが適切であると考えております。

 具体的には、承諾の取り方として、現時点では、例えば、ウェブページ上でチェックを入れるだけで承諾とすることは認めない、消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるものが契約内容を記した重要なものであること、それを受け取った時点がクーリングオフの起算点となることを明示的に示す、契約の相手方がデジタル機器に不慣れな一定の年齢以上の方には、家族などの契約者以外の第三者の関与、例えばメールアドレスにも送付などを行わせることなどを考えております。

 いずれにせよ、法案成立後、オープンな場で広く意見を聴取する検討の場を設けるとともに、消費者委員会でも御議論いただき、消費者団体の現場にいらっしゃる相談員の方などから丁寧に意見を伺うこととし、それも十分に踏まえながら、消費者の承諾の実質化について具体的に検討してまいります。

○井上(一)委員

 ここで確認しておきたいのですが、政令を作る際には、法律で定められた消費者委員会、すなわち、消費者団体とか弁護士の方々などの専門家の方々が入った委員会できっちりこの政令を審議するということを、明確にお答えしておいていただきたいと思います。

○高田政府参考人

 お答えいたします。

 政令を作る際には消費者委員会の意見を聞くこととされておりますので、消費者委員会の意見をしっかり聞いて検討したいと思います。

○井上(一)委員

 是非、慎重に検討をしていただきたいと思います。

 それでは、クーリングオフについてもお聞きしたいと思います。

 私も、議論を聞いていても、消費者被害を防止するという立場からは、やはり明確な規定を置いておいた方がいいのではないかと思います。

 この点についても、参考人の方々に私も聞きました。クーリングオフを行使するときに電子メールを使った場合、この解除の効力の発生の時期をどう考えるかと。

 この検討委員会の委員長だった河上参考人も、意思表示に代わって電子情報が発せられたというような場合には、書面が発せられたのと実質的には等価であると考えて、発せられたときにその効力を生ずることは明記しておいた方が、いろいろな形でトラブルを避けることができるとおっしゃっています。

 それから、石戸谷参考人も、消費者庁の方も、発したときに効力を生ずるんだという御説明でしたけれども、今の条文からしてなかなかそれは無理があるんじゃないか、明記しないとそこはすっきりしないんじゃないか言われています。

 先ほどのやり取りを聞いていても、根拠規定をしっかり置いておいた方が私は消費者のためになると思います。やはり、法律を読んだときに、明確にその条文があった方がいいに決まっています。

 今、よりよい法案を目指して与野党で協議しているわけですから、是非、この点についても、更にこの点を考慮していくということが大事ではないかと思いますので、是非知恵を絞っていきたいと思います。

 その点についてちょっと、政府はどのようにお考えでしょうか。

○高田政府参考人

 御指摘の点につきましては、今整理中でございますので、もうしばらくお待ちください。

○井上(一)委員

 しっかり整理していただくということは大事ですが、是非、法案修正の今協議をやっているわけですから、この点、クーリングオフの効果、電子メールの効果についても明確な規定をやはり置いておくということを、是非与野党で協議していきたいと思っています。

 次は、送りつけ商法対策です。

 これはずっとこの委員会でも、送りつけたものの所有権がどこにあるのかということでずっと議論させていただいて、参考人質疑でも、私はこの点を聞きました。

 河上参考人は、こうおっしゃっていました。判例では、不法原因給付で相手に対して渡されたものは、それが返還請求ができないことの反射的効果として、相手のところに所有権は移転すると説明しております。したがって、そのような、所有権が相手に反射的効果として移転した以上はそれを直ちに処分して構わない、換金しても構わないという結論になるはずですというのが河上参考人です。

 石戸谷参考人は、大体同じ趣旨なんですけれども、所有権はあるんだが返還請求できないんだから反射的効果として処分したって構わないという整理だと言われています。

 それから、池本参考人は、例えば有害な商品で、廃棄するのに逆に費用がかかるようなものを送りつけられて、所有権が当然に自分になったらそれも逆に困る、仮にそうだとすると、贈与とみなすことができるようにしなければいけないのかと、ただ、所有権が当然に移ると言ってしまうのは、なかなか難しい問題と言われています。

 こういう説明で、私も理解は進んだんですけれども、この点について、もう一度、消費者に分かりやすいように、所有権の移転、それから返還請求権との関係、これを御説明していただきたいと思います。

○片桐政府参考人

 お答えいたします。

 所有権は、憲法上認められた財産権の主要なものでございます。したがって、贈与や売買契約といった所有権者の意思表示なくしてある者の所有権を剥奪し他者に与えるという法的論理構成については、極めて慎重な検討が必要であります。

 一方で、消費者が送りつけられた商品をどう扱っていいか分からないという不安定な状況や、もしかすると送りつけた者から返還請求されるのではないかという心配を払拭する観点から、特定商取引法の制定当時、消費者が頼んでもいないものを一方的に販売業者が送りつけた場合は、一定の期間経過した後は、その販売業者は商品の返還を請求することができないと規定することとしたものでございます。

 販売業者は、商品の返還を請求することができないこととなれば、その反射的効果として所有権も主張できなくなり、所有権が移転したときと法律効果としては差異は生じないものとなります。そのため、商品の送付を受けた者は、自由に当該商品の処分などをすることができるようになります。

 なお、この処分などには、廃棄するだけではなくて、使用や売却することも含まれており、この解釈は現行法でも既に定着しているところでございます。

 今回の法改正によりまして、消費者から見ると、送りつけられた商品を直ちに処分等ができることとなります。この新たな制度については、コロナ禍での消費者の置かれた特殊な状況に乗じて詐欺的な行為を行おうとする悪質業者も見られることから、消費者庁としては、積極的に周知、広報、普及啓発を行っていく方針でございます。

○井上(一)委員

 大変分かりやすい説明だったと思います。これを一般の消費者の方々にも是非理解してもらわないといけないと思うので、周知、広報をしっかりしていただきたいと思いますが、どういうような周知を考えておられますか。

○片桐政府参考人

 お答え申し上げます。

 全国で説明会を開いて、今回の法改正の趣旨について周知、普及活動をしてまいります。また、デジタル化の進展しているこのような社会状況でございますので、SNS、フェイスブック、こういったツールを活用いたしまして、この制度の内容について普及啓発を速やかに行ってまいりたいというふうに考えております。

○井上(一)委員

 是非、周知をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、消費者の被害を防止するということで、今回この特商法の改正となるわけですが、消費者庁に対する期待も当然大きいですし、それから、それに対する執行機関の整備というのも大事な課題だと思います。

 消費者庁の組織力の強化について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○井上国務大臣

 消費者庁においては、従前より、多様な人材にその専門的な知見を生かして活躍いただいているところであります。

 本法案が成立した暁には、法の運用や、あるいは海外当局との連携がしっかりなされるよう、人事戦略という観点でも、より一層十分な対応をする必要があると理解をしております。

 そこで、職員の採用、人事交流、研修の充実などの様々な手だてを活用して、組織として専門的な知見のある人材の確保に努めるほか、必要な体制の充実に取り組んでまいります。

○井上(一)委員

 次に、消費者行政における執行力の充実ということで、地方における特商法の執行力の充実に向けて、質問したいと思います。

 これは平成29年8月に消費者委員会がまとめておりまして、特に、地方における特商法の執行の課題、それから今後の取組の方向性を示しております。

 これを読みますと、地方における執行状況については都道府県に差があるのが現状であります。なぜ、このように都道府県によって差が出ているのか、御説明いただきたいと思います。

○片桐政府参考人

 お答え申し上げます。

 消費者庁、それから各地方自治体、それぞれの法執行に当たっての体制の差異、それから、それぞれの地域における、消費者庁は全国レベルでございますけれども、問題となる商行為の状況、こういったものの差異によって、御指摘の差異が生じているというふうに考えております。

○井上(一)委員

 それで、この消費者委員会の報告書の中では、多くの都道府県において、執行の基本となる消費者行政担当職員は、特商法の執行業務のほかにも複数の業務を兼務している、都道府県においては体制への不安を抱え、執行ノウハウの蓄積に苦慮しているという状況です。

 こういう状況を改善していかないといけないと思うのですが、そのために消費者庁としてどういう取組をされていくか、お聞かせいただきたいと思います。

○片桐政府参考人

 お答え申し上げます。地方での執行力の強化、大変重要な御指摘だと思います。消費者被害の防止のために悪質事業者に対して厳正に対処していくためには、都道府県における更なる執行強化を図っていくことが重要であるというふうに認識しております。委員御指摘のとおりでございます。

 消費者庁においては、地方における法執行力を強化することを目的として、地方消費者行政強化交付金におきまして、法執行に係る専門家の活用等の体制の整備を支援するほか、消費者庁所管法令の執行に関する専門知識や実践力を身につけるための研修を地方公共団体職員、それから地方支分局職員に対して実施しているところでございます。

 引き続き、こういった研修を通じた都道府県における執行担当者の能力の向上、それから、国と都道府県による連携調査、同時行政処分などを通じまして、都道府県における体制整備の支援、それからノウハウの共有を図ることによりまして、地方における法執行の強化に引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

○井上(一)委員

 この特商法の改正というのは、消費者の被害を防止する、本当に与野党を問わず、消費者の立場に立って考えていかないといけない法律だと思います。そのためにも、今、与野党で最終的な協議がされていますけれども、全会一致で合意できるような内容を、是非、最後の最後まで知恵を絞って成立させたいということを強く願って、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

【 地域の行事や集会への参加 】

地域行事・ミニ集会・座談会などありましたら、お知らせください。
少人数の集まりでも、どこでも参ります。
皆様とお話しさせて頂くことを楽しみにしています。
ぜひ下記のお問い合わせからご連絡ください。

 お問い合わせ

PAGE TOP