○井上(一)委員
希望の党の井上一徳です。
きょうは農業について質問をさせていただきたいと思います。
私の問題意識は、今、世界の人口77億人、これから40年後には100億人を超えると言われています。そして、地球温暖化に伴う災害の規模の激甚化という状況を踏まえると、今はお金を出せば食料が入手できていますが、これから、安定的に食料が確保できていくのかというところにあります。
私は、そういう問題意識を持ちながら、兵庫県の養父市というところに夏に行ってまいりました。養父市は農業について非常に先進的な取組をしておりまして、戦略特区の中で本当にさまざまな取組をしております。私は大変刺激を受けまして、日本の将来の農業のあり方というのを養父市に見た思いがしました。
この戦略特区について言えば、養父市以外にも、農業について、新潟とかさまざまなところでやっていると聞いていますので、そういう状況を踏まえながら、日本の農業について質問をしたいと思っています。
それで、幾つか資料をつけております。最初の資料1を見ていただきたいんですが、これは農林水産省の資料で、「高齢化・減少する農業従事者」ということであります。平成元年には324万人いた農業従事者が、もう今は140万になっている。平成30年の数字は145人でしたので、1年間で5万人少なくなっています。著しくアンバランスな年齢構成ということで、平均年齢は67歳、40代以下が約1割であります。70代以上の方が59万人おられます。5年、10年後を考えると、更に農業従事者数が減っていくというのはもはや間違いないという状況です。
それから、資料2を見ていただきまして、食料自給率は農林水産省の方でも目標値を持って上げていくと言っておりますが、現実的にはカロリーベースでも生産額ベースでも落ち込んでいっています。
それから、資料3を見ていただきますと、諸外国の食料自給率について、日本は、この表で一番下になっています。こうした厳しい状況にあるわけです。
そういう中で、私は、農業については、今のうちから本当に真剣に取り組んでいかないと、40年後、世界の人口が100億人を超えるときに、私たちの次世代の子供や孫が本当にきちんと食べていけるのかという問題意識を持っているのです。
私は、農水省として、今こそ積極的に農業改革に取り組んでもらいたいと思っているのですが、今の問題意識と今後の取組の方向について聞かせていただきたいと思います。
○河野大臣政務官
現状、農業者の高齢化がまた進みまして、それから担い手の確保は非常に重要でございます。また農地集積にも大きな課題があるというふうに手前ども承知をしております。
そんな中、農業者の高齢化現象が進む中、現在の担い手の経営形態を支えていくためには、農地が担い手にまとまった形で利用できることにすることが大変重要と承知しております。このため、人・農地プランを通じまして、集落での農地利用の話合いを進め、農地バンクにより担い手への農地集積、集約化を図ってまいります。
また、担い手確保に関しましては、次世代の担い手の確保、育成には特に技術の習得や就農初期の資金の確保が大きな課題となっていることから、四十九歳以下の新規就農者に対しましては、就農準備段階や経営開始直後の資金交付でございます農業次世代人材投資事業を行っているところでございます。
これらの取組を総合的に推進することにより、農業の担い手確保また育成に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
○井上(一)委員
私は、方向的には、農地を集約化していく、それからやる気のある人に農業を担っていただくということで取組を進めていくということが大事で、養父市でも同じ問題意識で取り組んでおりまして、基本的には農地の利活用については農業委員会が所管していますが、それを市町村と連携をしながら農地の流動化を図ろうということで取り組んでおり、そうすることで事務処理期間が短くなったり、また、空き家に附属する農地については、1アールでもいいという形にしてその利活用を図っているということで進めております。
ほかに、養父市以外にもさまざまなところでこういう取組をしていると思いますが、全体として、特区としてどういう取組が行われているのか、その効果について聞かせていただきたいと思います。
○村上政府参考人
お答え申し上げます。
代表的なものの御紹介にとどめさせていただきたいと思いますが、例えば、農地の権利移転許可の特例でありますとか、企業による農地取得の特例でございますとか、生産法人を設立する際の要件の特例といった措置を設けてございまして、御紹介いただきました養父市は、そのいずれも積極的に活用していただいている事例でございます。
例えば、権利移転許可の特例につきまして参考まで御紹介いたしますと、これは、市町村と農業委員会の合意に基づき、農地の権利移転に関する許可事務を市町村に移管することで事務処理期間を短縮するということでございますけれども、養父市で255件、新潟市で740件、常滑市で123件、これまで合計1118使われまして、事務処理期間も、養父市でいえば18日から6日に短縮するといったような効果を上げているところでございます。
○井上(一)委員
私自身は、こういう効果が出ているという認識のもと、全国的にも展開すればよいのではないかと思っていますが、農水省としてはこの点についてどういう御認識でしょうか。
○倉重政府参考人
お答えいたします。
この特例につきましては、地域からの提案を踏まえて、農地流動化を促進する観点から、農業委員会と市町村の事務分担に関する特例として措置されたものということでございますけれども、本特例を活用するかどうかにつきましては、まさに現場の事務体制の実態に合わせて判断されるものと考えておりまして、農林水産省といたしましては、農業委員会と市町村がよく話合いを行っていただいた上で、必要に応じ国家戦略特区の仕組みの中で活用されていくものというふうに考えております。
○井上(一)委員
ぜひ前向きに、積極的に取り組んでいただきたいと思っています。
もう一つが、農業を行う法人の緩和ということで、今まで当然のことながら、株式会社は参入できなかったわけですが、養父市においては、まさに特例ということで参入も許可されておりまして、耕作放棄地が営農に更に使われるということで非常に私は評価しています。他方で、資料4でつけていますが、江藤国務大臣に聞いたときには、養父市の件については、戦略特区でやったわけですが、現時点では非常に活用状況が低調で、法人に渡すと、もうからなくなるとその土地を投げ出して、農地として戻らないのではないか、国民の財産が毀損されているのではないかという危険がありましてということで、非常に後ろ向きな答弁で、私は少し驚きました。
この点について、まず内閣府として、企業が農地を所有することについてどのように評価されているか、お聞かせいただきたいと思います。
○村上政府参考人
お答え申し上げます。
御指摘の措置は、平成28年度に創設され、農業所有適格法人以外の法人について、一定の要件を満たす場合、五年の時限措置として、当該自治体を経由して農地の取得を認める措置のことを御指摘いただいたというふうに承知してございます。
現在、本特例は、兵庫県養父市だけでございますが活用されておりまして、農地取得とリースの組合せにより、これまで5社で合計21ヘクタールで営農しておりまして、全体としても耕作放棄地の再生にも相当程度貢献していると理解をしております。
また、この企業による農地の取得特例、その他の措置も併用してではございますが、独自の酒米づくりに挑み、そのストーリーを用いてブランド化した日本酒の製造販売を手がけるといった事業者でございますとか、みずからの事業の閑散期を上手に活用して、その部分を上手に農業への参入にうまく使うというようなことで地元との連携に成功した製造業者の例など、それぞれの特性を生かした農商工連携のいい事例も出てきているというふうに考えてございます。
いずれにいたしましても、企業の農地取得の特例は、耕作放棄地の再生や農産物等の高付加価値化に一定の効果を上げているというふうに評価をしてございます。
○井上(一)委員
今答弁いただいたような認識も、私は同じ認識なんですが、もう一度改めて農林水産省の認識を聞かせていただきたいと思います。
○倉重政府参考人
お答えいたします。
まず、企業の農業参入、一般についてでございますけれども、平成21年の農地法改正でリース方式、賃貸借とかでございますけれども、リース方式での農業参入は完全に自由化をいたしました。現に、法改正前の約五倍のペースでリース方式については参入が進んでおりまして、現在、3286法人となっております。他方、御指摘のございました企業の農地所有の特例につきましては、養父市の、国家戦略特区として試験的に導入されまして、現在5社が所有を認められておりますけれども、その所有面積につきましては、5社の経営農地面積全体の6%のみとなっております。
農林水産省といたしましては、現時点での農地所有の特例の活用実績というのは低調であるというふうに考えております。
○井上(一)委員
ここで聞くと、何か養父市でやっている企業はもうからなくて投げ出したいようなイメージの答弁なんですが、養父市に行って実際聞いてみると、養父市にとっても、企業が入ってもらって非常に活性化しているとおっしゃっていましたし、企業でも養父市のために頑張りたいということで、非常に前向きで力強い発言だったものですから、かなり違和感を感じた答弁でした。
養父市に聞いてみますと、企業が頑張って農業をやっていて、どうしても撤収せざるを得ないようなときは養父市で買い戻すと、そこまで言っているわけですから、私は、企業が農地を取得して休耕地を耕したいという意欲をそがないような形で、ぜひ農水省の方としても取り組んでいただきたいと思います。
今言った戦略特区については、養父市や新潟を始めさまざまなところで前向きな取組をされていますから、ぜひ、農水省としても、そういった方々からの意見を聞いて、前向きで積極的な取組をしていただきたいということを強くお願いして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。