○井上(一)委員
希望の党の井上一徳です。
本日は、日米地位協定について質問をさせていただきたいと思います。
資料でお配りをしておりますが、日米地位協定について、これは国際法上はどうかという議論がありまして、地位協定がおかしいのではないかという議論があります。資料の最初のところで、「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、」となっていて、本当に国際法上あるのかないのかというのが議論になっており、私も質問主意書でこの点については確認しました。質問主意書のご答弁は、「一般国際法上、受入国の同意を得て当該受入国内にある外国軍隊及びその構成員は、受入国の法令を尊重する義務を負うが、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入国の裁判権等から免除されると考えられる。」ということで、先ほどの部分については削られております。
それで、そういうことであれば、ホームページも変えた方がいいのではないかという指摘をさせていただいて、外務省も直していただいたので、その点については評価させていただきたいと思いますが、変えたことによって、考え方は変わったのかということが参議院の予算委員会でも議論になっておりましたが、政府の答弁では、政府の考え方に特に変わりがあるわけではありません、よりわかりやすく説明したものですと言っております。
やはり私は、考え方を変えたというのが国民に対してわかりやすい説明だと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
○鈴木(量)政府参考人
お答え申し上げます。
御指摘いただきました、外務省ウエブサイトに掲載している「日米地位協定Q&A」につきましては、同協定をよりよく理解していただくとの観点から、今般改定を行ったものでございます。
具体的には、米軍には日本の法令が適用されないのですかという質問に対して、従来は、一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されないというふうに記載しておりましたけれども、今般、「一般に、受入国の同意を得て当該受入国内にある外国軍隊及びその構成員等は、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入国の法令の執行や裁判権等から免除される」、すなわち、外国軍隊及びその構成員等の公務執行中の行為には、派遣国と受入れ国の間で個別の取決めがない限り受入れ国の法令は適用されませんというふうな形で記載することといたしました。
この改定は、国民の皆様によりわかりやすく知っていただきたいということで改定を行ったものでございまして、改定の前後で考え方に異なるということはございません。
以上でございます。
○井上(一)委員
素直に言って、やはりここは説明を変えたというふうに私は理解しております。
あと一つ確認は、質問主意書の中では一般国際法上云々とあるんですけれども、これを、あえて新しい「日米地位協定Q&A」のホームページでは、一般国際法という言葉を使わずに「一般に、」としています。これはきのう聞いたら、それ程違いはないとおっしゃっていましたが、一般国際法というのを「一般に、」にした理由は何でしょうか。
○鈴木(量)政府参考人
お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、この改定というのは、国民の皆様によりわかりやすく御理解いただくという観点からしたものでございます。
そして、ここに言う「一般に、」というのは、従来から御説明してきた、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等の法的地位に関する一般国際法を指すものでございます。
一般国際法というのは、一般的に、国際社会の国々を一般的に拘束する国際法というものを指しているんですけれども、必ずしも国民の皆様に広く知られているとは言えないというふうに私ども考えまして、今般の改定では、ウエブサイト上における記載である、そういう皆様に広く知っていただく記載であるという性格を踏まえまして、このような専門用語の使用は避けまして、国民の皆様にとってよりわかりやすいと思われる説明ぶりを用いたものでございます。
○井上(一)委員
私は、ホームページには載っていないのですが、主意書の答弁書のここの部分が非常に大事だと思っていて、「免除の具体的内容については、個々の事情により異なり、必要に応じて、こうした一般国際法上の考え方を踏まえつつ、当該軍隊の派遣国と受入国との間で個々の事情を踏まえて詳細が決定される」。要は、一つ一つ個々の事情を踏まえて決定していく、ここの部分が非常に重要だと思っています。
では航空法がどうなっているのかということを資料で示しているのですが、資料の4のところで、いろいろ書いてあるように、航空法の特例法というものがあります。
当然、国内の民航機については全部航空法が適用されているわけですけれども、米軍については、航空法は適用するという前提のもとで特例法があります。しかし、これこれについては適用しない、これこれについては適用しないという書いてあって、一番最後の三項のところで、「航空法第6章の規定は、政令で定めるものを除き、適用しない。」となっているのです。
次のページをちょっとめくっていただきまして、資料5の1をご覧ください。航空法第六章と米軍と自衛隊との比較ということで、自衛隊も適用除外があります。
在日米軍の場合、6章については全部適用除外になっています。他方で、自衛隊については、一つ一つの条について、これは適用除外するかどうか、適用除外する場合にはどういう場合に適用除外するんだというのを一つ一つ全部細かく検討しているわけです。私は、この違いが、大きいと思っています。
例えば、資料5の2に85条があるのですが、粗暴な操縦の禁止は自衛隊については適用となっていて、これは当たり前の適用だと思います。しかしながら、米軍についてはこれは適用除外になっております。
自衛隊には適用し、米軍については適用除外にしている理由について教えてください。
○高野政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘の航空法第85条、粗暴な操縦の禁止につきましては、運航上の必要がない低空飛行や高調音の発出、急降下等の操縦を禁止し、他人に迷惑を及ぼすような行為を規制するために設けられているものでございます。
当該規定につきましては、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法により、米軍機に対してはその適用が除外されておりますが、自衛隊法においては航空法の適用除外にはされていないというのが事実でございます。
航空法は、そもそも民間航空の国際的な枠組みを規定する国際民間航空条約の規定等に準拠をして、航空機の航行の安全等を図るための方法を定めるために制定されたものでございまして、国際民間航空条約の適用を受けない米軍機につきましては、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法により、民間航空機の円滑な航空交通を確保するためのものを除き、航空機の運航に関する規定などについて適用が除外をされています。
これは、我が国が締結した国際約束である日米地位協定に基づきまして、米軍が我が国において活動することが認められていることを踏まえ、その履行を担保するために認められたものと承知をしております。
一方で、自衛隊につきましては、国際民間航空条約におきましては、国の航空機に直接適用されるものではありませんが、締約国に対して、自国の国の航空機の規制に対して民間航空機の航行の安全に妥当な考慮を払うということを求めております。この観点から、自衛隊機につきましては、自衛隊の航空機や任務の特殊性に鑑みまして、自衛隊法等によりまして航空法の一部の規定を適用除外としているところでございます。
以上でございます。
○井上(一)委員
このほかにも、例えば航空法の70条は、アルコールを飲んじゃいけないという、当たり前の規定です。これについても同じように、自衛隊機には適用されますが、米軍には適用されません。
それで、もう一つめくっていただいて、資料の6のところで、日米地位協定の5条が移動するときの根拠なのですが、航空機を含めて移動しますから、それに対してどういうような法令を適用するかということで、日米地位協定の合意議事録の第5条の4のパラグラフなんですけれども、「この条に特に定めのある場合を除くほか、日本国の法令が適用される。」ということで、原則日本国の法令を適用するとしているわけです。
にもかかわらず、先ほどの85条、それから70条を始め、第6章の規定はほぼすべて適用除外としているわけです。
ここは、日本国の法令が適用されるということにしているので、あえて6章の規定を丸ごと適用除外する必要はないと思うのですが、この考え方について、もう一度教えてください。
○鈴木(量)政府参考人
お答え申し上げます。
今御指摘いただきました、日米地位協定第5条に関する合意議事録の4でございますけれども、ここで規定されている日本国の法令と申しますのは、地位協定第5条の趣旨、すなわち、これは船舶、航空機の出入り及び移動に関する規定でございますので、同条に言及のある船舶及び航空機等の通行主体の通行行為自体を通行秩序維持の観点に立って規制する法令を指すものと解しております。
以上です。
○井上(一)委員
であれば、先ほどの粗暴な操縦の禁止とかアルコールの禁止も当たり前の規定なので当然適用にすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
○高野政府参考人
お答えを申し上げます。
繰り返しになりますが、航空法第6章の規定について、航空法第96条から98条まで及び第99条の2を除きまして適用除外にしております。航空法の特例法におきまして適用除外にしております。
これは、我が国が締結した国際約束である日米地位協定に基づきまして、米軍が我が国において活動することが認められていることを踏まえまして、その履行を担保するために定められたものと承知をしております。
以上でございます。
○井上(一)委員
普天間第二小学校で米軍のヘリが窓枠を落としました。幸いに児童にけがはなかったわけですが、けがをするおそれがありました。日本政府は米側に飛ぶなと言ったにもかかわらず米側はまた飛んでいるということであれば、危険な飛行をしてはだめであるということを米側に認識させるためにも、この条項は絶対適用させるべきだと思います。重ねて質問いたします。
○鈴木(量)政府参考人
お答え申し上げます。
お尋ねの、米軍に適用する我が国の法令の範囲の問題につきましては、仮に必要と判断される場合にいかなる方法でこれを行い得るかは、個別具体的に検討する必要があることから、一概にお答えすることは差し控えたいと思います。
いずれにしましても、米軍に適用する我が国の国内法令の範囲の見直しについては、米側及び関係省庁との調整を要するものと考えております。
○井上(一)委員
こういうところについては、米側と協議しても米側も理解すると思うのですが、米側と協議する考えはないですか。
○鈴木(量)政府参考人
政府といたしましては、米軍の運用に当たって、地域住民の安全確保、それから地域における環境の保全がしっかりとなされることが重要と考えておりまして、累次、米側と協議を行っているところでございます。
○井上(一)委員
この点についても米側と協議を行っていると理解してよろしいでしょうか。
○鈴木(量)政府参考人
航空機の安全の問題につきましては、日米合同委員会等の枠組みがございますので、いろいろな場で私ども、米側とは協議を行っているところでございます。
また、同時に、米軍機は全く自由に飛行を行ってよいというわけではございませんで、日米地位協定第16条に、我が国の国内法を尊重する義務を有するということが明記されておりまして、ここで言う我が国の国内法には、当然、我が国の航空法等も含まれておるわけでございます。米軍も公共の安全に妥当な考慮を払って飛行を行っているというふうに認識しております。
○井上(一)委員
先ほどの普天間第二小学校の例ではないですが、尊重していない部分があるので、米側にこういった点について強く認識させるためにも協議した方がいいと私は強く思っているんです。
大臣、最後に、やはり協議すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○河野国務大臣
地位協定に関するさまざまな問題については、政府として、最も効果的かつ機動的に対応できる方法で対応してまいりたいと思います。
○井上(一)委員
では、時間が来ましたので、質問を終了します。