国会活動

食料問題、地域での農業

〇第198回国会 衆議院 総務委員会 2019年3月7日(木)

○井上(一)委員 

 希望の党の井上一徳です。

 今日は、日本の将来において特にこれから重要となってくる食料問題について質問をさせていただきたいと思います。

 我が国の人口は、もう御承知のとおり、減少傾向にありまして、2050年には1億人を切るのではないかというような推計もあります。他方で、今世界の人口は75億人ですけれども、2050年には90億人を超えると試算されております。

 それで、中国やインドが経済発展して、農産物、畜産物の需要が大変ふえておりますが、今後更に、さまざまな途上国が発展し、そして所得水準が上がっていくということになれば、更に農産物、畜産物の需要が格段にふえていくということになります。そうすると、日本の相対的な経済力は落ちていますので、今までのように食料を安定的に調達するというのが将来的にはかなり難しくなっていく、そういう時代に入ってくるのではないかという問題意識です。

 「奇跡の集落」という本を書いた元地域おこし隊の多田さんもこの本の中で言っているのですが、やはり、持続可能な社会をつくっていくためには、日本社会で、国内で必要な食料を確保できるといった国全体の仕組みをつくっておく必要があるのではないかと。私もそのとおりだと思っています。

 食料自給率を調べてみますと、これは長期的にずっと低下傾向になっていまして、平成29年度ではカロリーベースで38%ということになっています。今申し上げたように、中長期的視点に立って、我が国の食料の安定的確保、これを図っておくべきだと思いますが、副大臣はいかがお考えでしょうか。

○高鳥副大臣 

 井上委員にお答えをいたします。

 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国家の国民に対する最も基本的な責務の一つでございます。

 世界人口の増加、途上国の経済発展による食料需要の増大、気象変動など、世界の食料需給及び貿易における不安定要因が増す中で、食料の安定供給を確保するためには、食料自給率の向上が重要であるというのは委員御指摘のとおりだと思います。

 政府といたしましては、平成37年度までに食料自給率をカロリーベースで45%まで引き上げる目標を設定しており、国内外での国産農産物の消費拡大や食育の推進、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大や飼料用米の推進、付加価値の高い農産物の生産、販売や輸出の促進、優良農地の確保や担い手の育成の推進といった各般の施策を講ずることとしております。

 引き続き、食料自給率の向上に向けた取組を進め、食料の安定供給の確保を図ってまいりたいと考えております。

○井上(一)委員 

 いろいろ勉強してみると、食料自給率という指標のほかに、食料自給力というような指標もあるというふうに聞いておりますが、この食料自給力とは何か、そして、今その食料自給力はどうなっているのか、御説明いただきたいと思います。

○光吉政府参考人 

 お答え申し上げます。

 世界の食料需給、これが不安定要素を持っている中、平素から、我が国農林水産業が持っております食料の潜在生産能力を評価しておく、これが重要と考えております。

 食料自給率につきましては、花などの非食用作物が栽培されている農地が有する能力は反映されないなど、潜在生産能力を評価する指標としては限界があるところでございます。

 このため、我が国農林水産業が有します潜在生産能力、これをフル活用することにより得られる食料の供給熱量を示す指標といたしまして、委員御指摘の食料自給力指標を試算をいたしまして、平成27年より公表してきているところでございます。

 平成29年度の食料自給力指標につきましては、米、麦、大豆中心の試算を行った場合には、日本人の平均的な推定エネルギー必要量、これを下回るものの、芋類中心の試算ではこれを上回る結果となっております。

 一方、御指摘の食料自給力指標の推移を見ますと、国内の潜在生産能力が徐々に低下してきているところでございます。このため、担い手への農地の集積、集約化、あるいは新品種の開発導入による単収の向上、新技術の導入による生産性の向上等の施策によりまして、自給力の維持向上を図ってまいりたいと考えております。

○井上(一)委員 

 やはり、食料の安定的確保というのは、国家百年の計でぜひ進めていっていただきたいと思います。

 私自身としても、潜在的な食料自給力を上げていくためには、まず耕作地を維持拡充していく、それから農業に従事する人をできるだけ多く確保しておく、それから効率的な農業を行っていくといったことを進めていく必要があると思います。順次、そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、耕作地の維持確保の観点から、荒廃農地を再利用していくということが考えられますが、今、荒廃農地のうち再生利用可能な農地はどの程度あるのか、それから、それをふやすためにはどのような取組を行っているのか、教えていただきたいと思います。

○高橋政府参考人 

 お答えいたします。

 荒廃農地のうち再生利用可能なものは、直近の平成29年度時点で92,000ヘクタールとなっておりまして、近年のトレンドとしては、調査を開始した平成20年時点の149,000ヘクタールに対し減少傾向となっております。

 農林水産省といたしましては、食料自給率向上のためには、限られた資源であります農地を有効利用することが重要であると認識しておりまして、今後とも、地域、集落の共同活動を支援する多面的機能支払交付金及び中山間地域等直接支払交付金や、担い手への農地の利用集積に向けて荒廃農地を含めた対策が可能な農地耕作条件改善事業等を始めとする基盤整備などを活用しながら、荒廃農地の発生防止と再生利用を支援してまいりたいと考えております。

○井上(一)委員 

 次に、人の観点から御質問をしたいと思います。先日、地域おこし協力隊について質問をさせていただきましたが、総務省で、これまで、平成29年3月31日までに任期終了した地域おこし協力隊の定住状況について調査を行っております。

 2,230名の方に調査をしたところ、活動地と同一市町村内に定住した方、それから活動地の近隣市町村、隣の市町村に定住した方を合わせると6割以上の方が活動地付近で定住するという結果になったと承知しておりますが、そのうち農業につかれた方、就農された方はどの程度おられるか、教えてください。

○佐々木政府参考人 

 平成29年度に実施した調査では、平成29年3月末までに任期を終了した隊員は累計で2,230人、その6割である1,396人の隊員が任期終了後も同じ地域に住み続けているということになっております。

 その中で就農等の状況を把握できるのは活動地と同じ市町村内に定住した方についてでありますが、1,075人のうち、約15%に当たる152人の方が就農等をしております。また、これに加えて、農業法人等に43人の方が就業しており、引き続きこれらの方々が地域農業の担い手として活躍している状況でございます。

○井上(一)委員 

 調べてみますと、基幹的農業従事者、つまりずっと農業に従事されている方が平成29年は前年に比べて7万9,000人減少したというような調査結果が出ております。そういう意味からいうと、この数をふやしていくのは相当大変だと思いますが、地域おこし協力隊の方々が農業につかれるというのは、一つの明るい兆しでもあるのではないかと思います。

 そういった方々を更にふやしていく努力が必要となってきます。市町村で農林水産業に従事されている方が手助けになると思いますが、これも調べてみると、市町村における部門別職員数の比較では、他の部門と比べても農林水産関係の職員が大きく減少しているという結果になっています。

 私は、農林水産関係の職員をできる限りふやしていく必要があるのではないかと思いますが、農水省としてはこの点についてはどのように認識されていますでしょうか。

○光吉政府参考人 

 お答え申し上げます。

 住民にとって最も身近な行政機関であります市町村、これは、農林漁業者の方がいろんな取組を行おうとされるときに大いに頼りにされる存在であると考えられます。

 しかしながら、委員御指摘のように、市町村においては事務事業の見直しや組織の合理化などにより職員数が減少しておりまして、特に農林水産関係で減少の程度が大きくなっているところでございます。

 農林水産省におきましては、地域や現場の農業者に直接施策情報を提供したり、あるいはまた、地域の課題や農業者の生の声を聞き取り、それを施策に生かすため、地方支分部局であります地方農政局のもとに、全国の都道府県庁所在地などに五十名の地方参事官とそのスタッフを配置をしております。

 この地方参事官につきましては、地域の農業者と日々意見交換を行ったりしております。その際に、市町村関係者や農業委員会、県庁の出先機関の方などとも連携をしているところであり、このような取組を通じまして、市町村による農林水産施策の推進をサポートしてまいりたいと考えております。

○井上(一)委員 

 ありがとうございました。

 農政に携わるその町村の職員の方の研修をするということで、全国町村会でもその研修の機会を設けておりまして、地域農政未来塾というのがあります。

 私の地元の与謝野町の方もこの塾に一期生として参加しまして、ICT、インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー、最新の技術を活用した効率的な農作物の集荷システムを構築したという話を聞きました。こうした取組は非常に重要だと思います。

 それで、この方、井上さんというのですが、聞きましたところ、最先端の技術を活用したスマート農業を進める中で課題も見えてきたということで、栽培に関するデータが与謝野町一つの町だけではなかなか集まらず、将来を予測するためには膨大なデータの蓄積が必要となるということで、できる限りその範囲を広げてデータを収集していきたいということでした。

 こういった、いわゆるビッグデータについては農業についても大変重要だと思うのですが、農作物の栽培に関するビッグデータの収集や分析についての現状、それから今後の取組についてお聞かせいただきたいと思います。

○青山政府参考人 

 お答えいたします。

 我が国の農業競争力の強化を図っていくためには、委員御指摘のように、生産者がさまざまなデータを活用して、生産性の向上や経営の改善に挑戦できる環境を整備していくことが重要と認識しております。

 このため、農林水産省では、関係府省と連携して、さまざまな農業関係のデータの連携、共有、提供を可能とする農業データ連携基盤の構築を進めており、本年4月から、国の研究開発法人であります農研機構を母体として本格稼働する予定でございます。

 栽培データを始めとするデータの収集につきましては、30年度補正予算及び御審議いただいております31年度予算で所要の額を計上しておりますスマート農業関連実証事業において、農研機構に事業対象の農家の営農データを送っていただき、これを分析、検証した上で、農業データ連携基盤上で提供することを考えております。

 今後、農業データ連携基盤におけますデータの範囲を、生産段階のみならず、加工、流通、消費に至るバリューチェーン全体に拡大していきますとともに、こうした農業データ連携基盤を活用いただくことによりまして、民間企業による新たな農業サービスが創出され、例えば、土壌の状態、作物の生育や気象の状況に応じた精密な栽培管理が可能となるなど、生産管理の効率化や収量、品質の向上が図られることを期待しております。

 以上でございます。

○井上(一)委員 

 総務大臣からも、近年は、若い世代を中心に田園回帰の意識が高まっているという話もありました。

 総務省が実施した調査でも、20歳代、30歳代の四割が農山漁村地域への移住について前向きな回答を行っているということであります。

 我が国は、平野の面積が少ない分、中山間地域において農業をしている人も大変多いということであります。この中山間地域は農業をするには不利な状況ということで、ここの地域を支援していくことは非常に重要になってくると思います。さまざまな支援制度があると思いますが、この中山間地域を支援する制度として、どういう制度があって、どういう効果が出ているか、教えていただきたいと思います。

○高橋政府参考人 

 お答えいたします。

 中山間地域におきましては、地域の活力の維持や多面的機能の発揮の観点から、特色ある地域資源を活用した所得向上や地域活性化に向けた取組への支援が必要と認識しております。

 そのため、中山間地域等直接支払いを始めとした日本型直接支払いによって地域を下支えしつつ、中山間地農業ルネッサンス事業や中山間地域所得向上支援対策による地域の特色を生かした多様な取組への総合的かつ優先的な支援、鳥獣被害対策とともに有害鳥獣を地域の所得にかえていくジビエの利活用の推進、障害者等の働く場を確保する農福連携や、農泊を含む観光、教育と連携した都市農村交流の支援など多様な施策を講じ、中山間地の農業の振興を図っているところでございます。

 引き続き、これらの施策を通じまして、中山間地域の農業の振興と、美しく活力のある農村の実現に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

○井上(一)委員 

 中山間地域支援以外にも、例えば、農村地域が持つ多面的な機能を維持する支援、それから自然環境の保全に役立つ農業生産活動を支援する制度も使ってさまざまな支援をしていると聞いておりますが、こういった制度の内容、それから効果について教えてください。

○横井政府参考人 

 お答えいたします。

 まず、多面的機能支払交付金でございますが、これは平成26年度に創設された制度でございます。これは、地域の共同活動によります水路、農道、ため池等、地域資源の保全活動に対して支援を行いまして、農業、農村の有する多面的機能の適切な維持、発揮を促進するものでございます。

 この制度につきましては、創設から5年目ということで、本年度、この交付金による取組状況ですとか効果について、学識経験者や有識者で構成される第三者委員会の指導助言を得ながら評価の取りまとめを進めておりますが、この中で、具体的な効果としましては、遊休農地の発生防止や農業施設の機能の維持、農村の景観や生活環境の保全向上、さらには、地域住民も含めた多様な主体が参画した共同活動を通じまして、地域コミュニティー機能の強化ですとか、農地集積を始め、農村振興に向けた話合いの促進といった効果が出ているという評価がなされているところでございます。

 農林水産省といたしましては、この交付金によりまして、地域資源の保全活動が持続的に取り組まれ、農業、農村の有する多面的機能が適切に維持、発揮されるように、引き続き地域の取組を支援をしてまいりたいと考えておるところでございます。

○井上(一)委員 

 副大臣からもありましたが、食料問題というのは、国家の本当に基本的な、大事な問題だと思います。自分たちの子供、孫の世代がしっかり食料が安定的に調達できるように、ぜひ国家100年の計でよろしくお願いしたいと思います。

 では、以上で終わります。

 

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